安房作品におけるたぬき。代表作「遠い野ばらの村」「雪窓」の印象が強いのですが、全体的には、あまり作品数が多いわけではありません。
単行本未収録済み作品は、6作品。未収録作品をあわせても、14作品です。
半分以上が単行本未収録作品であり、主人公に採用したものも、すべて単行本未収録です。
「月夜のオルガン」は、安房さんが動物を主人公に書いた、記念すべき第一作です。
他の動物がもっと森の奥に引っ越していってしまったのに、音楽がすきで、
学校のオルガンの音から離れがたく、里の近くに住んでいる、たぬきの兄弟の話です。
そして、たぬきといったら、なんといっても、「雪窓」の
おでん屋のおやじさんの助手となったたぬきです。
「三角のぷるぷるっとした奴、ください」の、セリフのインパクト!
奥さんを亡くし、娘の美代を亡くして以来、
ひとりぽっちだったおやじさんのこころを、
どんなにか、温めてくれたことでしょうか。
そして、身内は遠くに住んでいるけれど、実質ひとりぽっちの
雑貨屋のおばあさんを訪ねて来てくれる、
やさしい幻の孫であるたぬきたちのお話、「遠い野ばらの村」。
たぬきは、やさしく、時にユーモラスに、ひとりぽっちの主人公に寄り添ってくれる存在です。
ちょっと毛色のちがうたぬきは、「月夜のテーブルかけ」。
たいそう、もったいぶっており、なんだか生意気です。
でも、お料理の腕は確かで、どこか憎めません。
未収録作品の「どんぐりの林」にも、がめつくて、人づかいが荒いたぬきが登場します。
その、最後にごちそうになるココアは、なんとも美味しそうです。
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タイトル |
登場人(動)物 |
発表年 |
主な収録作品集 |
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主人公 |
月夜のオルガン |
たぬきの兄弟 |
1962 |
単行本未収録 |
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たぬきの電話は森の1番 |
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1973 |
単行本未収録 |
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かたつむりのピアノ |
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1973 |
単行本未収録 |
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準主人公 |
雪窓 |
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1972 |
安房直子コレクション |
1 |
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遠い野ばらの村 |
こだぬきたち |
1979 |
安房直子コレクション |
2 |
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月夜のテーブルかけ |
ゆきのしたホテル経営 |
1981 |
安房直子コレクション |
3 |
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どんぐりの林 |
どんぐりのそろばん屋 |
1986 |
単行本未収録 |
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脇役 |
ゆうぐれ山の山男 |
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1970 |
単行本未収録 |
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山男のたてごとⅠ |
たぬきの親子 |
1970 |
単行本未収録 |
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山男のたてごとⅡ |
たぬきの親子 |
1970 |
単行本未収録 |
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緑のスキップ |
たぬきの親子 |
1972 |
安房直子コレクション |
7 |
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あざみ野 |
皮の長ぐつをねだる |
1975 |
銀のくじゃく |
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偕成社文庫 |
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タンタラばあさんのしゃぼん玉 |
たぬきの家族 |
1981 |
山のタンタラばあさん |
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ふしぎなあしおと |
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1982 |
単行本未収録 |
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すずをならすのはだれ |
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1990 |
すずをならすのはだれ |
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