安房直子的世界

童話作家、安房直子さんをめぐるエッセイを書いていきます。

たぬきー安房直子の動物手帖⑦

安房作品におけるたぬき。代表作「遠い野ばらの村」「雪窓」の印象が強いのですが、全体的には、あまり作品数が多いわけではありません。

単行本未収録済み作品は、6作品。未収録作品をあわせても、14作品です。

半分以上が単行本未収録作品であり、主人公に採用したものも、すべて単行本未収録です。

 

「月夜のオルガン」は、安房さんが動物を主人公に書いた、記念すべき第一作です。

他の動物がもっと森の奥に引っ越していってしまったのに、音楽がすきで、

学校のオルガンの音から離れがたく、里の近くに住んでいる、たぬきの兄弟の話です。

 

そして、たぬきといったら、なんといっても、「雪窓」の

おでん屋のおやじさんの助手となったたぬきです。

「三角のぷるぷるっとした奴、ください」の、セリフのインパクト!

奥さんを亡くし、娘の美代を亡くして以来、

ひとりぽっちだったおやじさんのこころを、

どんなにか、温めてくれたことでしょうか。

 

そして、身内は遠くに住んでいるけれど、実質ひとりぽっちの

雑貨屋のおばあさんを訪ねて来てくれる、

やさしい幻の孫であるたぬきたちのお話、「遠い野ばらの村」。

たぬきは、やさしく、時にユーモラスに、ひとりぽっちの主人公に寄り添ってくれる存在です。

 

ちょっと毛色のちがうたぬきは、「月夜のテーブルかけ」。

たいそう、もったいぶっており、なんだか生意気です。

でも、お料理の腕は確かで、どこか憎めません。

未収録作品の「どんぐりの林」にも、がめつくて、人づかいが荒いたぬきが登場します。

その、最後にごちそうになるココアは、なんとも美味しそうです。

 

たぬき

 

タイトル

登場人(動)物

発表年

主な収録作品集

 

 

主人公

月夜のオルガン

たぬきの兄弟

1962

単行本未収録

 

 

 

たぬきの電話は森の1番

 

1973

単行本未収録

 

 

 

かたつむりのピアノ

 

1973

単行本未収録

 

 

準主人公

雪窓

 

1972

安房直子コレクション

1

偕成社

 

遠い野ばらの村

こだぬきたち

1979

安房直子コレクション

2

偕成社

 

月夜のテーブルかけ

ゆきのしたホテル経営

1981

安房直子コレクション

3

偕成社

 

どんぐりの林

どんぐりのそろばん屋

1986

単行本未収録

 

 

脇役

ゆうぐれ山の山男

 

1970

単行本未収録

 

 

 

山男のたてごとⅠ

たぬきの親子

1970

単行本未収録

 

 

 

山男のたてごとⅡ

たぬきの親子

1970

単行本未収録

 

 

 

緑のスキップ

たぬきの親子

1972

安房直子コレクション

7

偕成社

 

あざみ野

皮の長ぐつをねだる

1975

銀のくじゃく

 

偕成社文庫

 

タンタラばあさんのしゃぼん玉

たぬきの家族

1981

山のタンタラばあさん

 

小学館

 

ふしぎなあしおと

 

1982

単行本未収録

 

 

 

すずをならすのはだれ

 

1990

すずをならすのはだれ

 

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