(9)「ひぐれのお客」
発言者・ネムリ堂
・gentle.finger.window
・香りと文学m.Aida
・ymst
・Planethand
ネムリ堂 こんばんは。ネムリ堂のスペースへのご参加をありがとうございます。
このスペースは、2023年12月に、安房直子を語り継ぐ会~ライラック通りの会主催で行った安房直子作品ランキングの結果をもとに、ランキングの1位から、ひと作品ずつとりあげて、おしゃべりしようというものです。
はじめに、かんたんに、童話作家安房直子さんについて、そのプロフィールをご紹介します。
安房直子さんは、1943年(昭和18年)生まれ、1993年(平成5年)に50歳で、ご逝去されました。日本女子大に学び、ムーミンの翻訳や北欧神話のご紹介で知られる山室静さんに師事、山室門下の生徒たちがたちあげた同人誌『海賊』を、活動の出発とされました。
「さんしょっ子」で、日本児童文学者協会新人賞を受賞、その後、
小学館文学賞(短編集『風と木の歌』)、
野間児童文芸賞(短編集『遠い野ばらの村』)、
新美南吉児童文学賞(連作集『風のローラースケート』)、
ひろすけ童話賞(「花豆の煮えるまで」)
亡くなった後に刊行された連作集『花豆の煮えるまで~小夜の物語』で、赤い鳥文学賞特別賞を受賞されました。
おもに、1970年代、1980年代の、昭和の時代に活躍された童話作家さんです。
その安房直子さん作品をめぐり、2023年12月に、あなたの好きな安房直子作品ランキングを募集し、ライラック通りの会会員43名、会員外40名、合計83名からのご回答をいただきました。
回答にあがった作品は、じつに116作品にものぼりました。
栄えある第1位は、誰もが納得の名作「きつねの窓」です。
スペースでは、この116作品を、一作ずつ順番に取り上げて行きたいと思います。
今回は第9回目ですね。前回の「北風のわすれたハンカチ」と同点の第8位で、「ひぐれのお客」を今日は取り上げたいと思います。
よろしくお願いいたします。
★松村真依子さん・MICAOさんの装画
ネムリ堂 では「ひぐれのお客」なんですけれども、今現在ですね。去年発売が始まったあすなろ書房さんの安房直子絵ぶんこで松村真依子さんの装画による『ひぐれのお客・初雪のふる日』というのが出ています。
また、MICAOさんの装画で、福音館書店からも表題作が「ひぐれのお客」という題での単行本が出ていたんですが、こちら、残念ながら、7月末をもって発行は再販未定の休刊。14年間の販売が終了し店頭通販の在庫がなくなり次第販売は終了ということで残念なお知らせを先日MICAOさんのⅩでのポストで知りました。
他の単行本ですと、
偕成社文庫の『遠い野ばらの村』、
ちくま文庫の『遠い野ばらの村』、
筑摩書房の単行本の『遠い野ばらの村』、
偕成社から出ている安房直子コレクションの2巻
にも収録があります。
また、『ひぐれのお客』は、こちら教科書にも掲載がありまして、
大阪書籍『小学国語 6』
山形教育用品(副読本)『やまがた中学生の読書 1』
にも収録があるようです。
こちらの初出は『母の友』(1980年)321号、
これが単行本化されたものの元になりますね。
どこが違うか、ちょっと読み比べてみたんですがほとんど違うところはありませんで、ひらがなが漢字になっている箇所が多数あるぐらいです。
「カシミア」が「カシミヤ」になってたり、とか「海」と書かれているものが、多分誤植なんですけど「梅」と表記されてあったりとか、それぐらいしか違いはなくて、ほとんど雑誌掲載の時とテキスト自体は同じものとなっているようです。
ではまず、あすなろ書房さんの安房直子絵ぶんこで出ている松村真依子さんの装画の魅力を皆さんにお話ししていただきたいと思います。
私としましては、松村さんの装画本当に素晴らしくて、特に好きなところがピンクがかった赤のスイートピー畑の素晴らしい花畑の様子、素敵だなと思いました。あと、暖炉の火の色の温かさですとか、あと、お店の中の素敵な様子ですとか、表紙が中の挿絵とまた違って、同じ構図でも猫がアップで出てるんですね。そういうとこもいいなと思いましたgentle.finger.windowさんいかがでしょうか。
松村真依子さんの装画についてお話をお聞かせいただけますか。
gentle.finger.window やっぱり私も見開きでピンク色がわーっと広がるスイートピー畑の装画が一番好きです。
ネムリ堂 素敵ですよね。
gentle.finger.window スイートピーがさわさわと風に吹かれながら、歌っている声が聞こえてきそうな安房さんらしい装画だなと思って憧れますね。
ネムリ堂 どこまでも続いていくスイートピー畑があんな風に描かれるんだなと思って、本当に素晴らしい絵でしたよね。
gentle.finger.window 優しいピンク色でね。本当にピンクは綺麗な色だなと思いました。
ネムリ堂 ありがとうございます。
gentle.finger.window アロマスタイルさんからいただいているご意見もご紹介しますか。
ネムリ堂 はい、お願いいたします。
gentle.finger.window 今日はリスナーでご参加いただいているアロマスタイルさんからも、MICAOさんの装画について、ご感想いただいておりますので、ご紹介します。
【贈り物は基本、お菓子やお花といった「きえもの」にしているのですが
福音館さんの『ひぐれのお客』は MICAOさんの刺繍
おしゃれでかわいい装丁(カバーをはずしても素敵)や紙の手ざわり サイズ感もちょうどよく
掲載作品のバランスの良さもあいまって
安房直子さんのよさをわかってくれそうな方
猫好きさんへの贈り物にさせていだいたことがあります】
とのことです。
ネムリ堂 MICAOさんも本当に素敵なんですよね。
gentle.finger.window そうですね。MICAOさんの装画もすごく素敵ですよね。
福音館の『ひぐれのお客』『ひぐれのラッパ』、どちらも素敵なんですけれど、『ひぐれのお客』は、カバーを取った中の方にも装画があって、そこも私、好きです。
ネムリ堂 あの夕焼け色のね。『ひぐれのお客』は、もう夕焼け色の赤い表紙になってるんですよね。で、また全然違う刺繍の、イラストというか絵があって、それもとってもね、カバーをめくる楽しみがあるというか、そういう素敵な装画でしたよね。
gentle.finger.window 安房直子さんの物語は、絵を描かれる方、MICAOさんは刺繍ですけど、絵を描かれる方には、思い描いて作品にしやすいんですかね。色とか語られる文章とかイメージがものすごく湧くのかもしれませんね。
ネムリ堂 そうですよね。絵を描く人にとっては、すごく絵にしたくなるような文章なのかもしれませんね。
gentle.finger.window そんなお話を聞いてみたいですね。
ネムリ堂 そうですね、m.Àidaさん、いかがですか松村真依子さんの装画や MICAOさんの装画についてちょっとお話をお聞かせいただけますか
香りと文学m.Aida はい。私は松村さんの方の絵本しか手元にないんですけれども、12ページのモノクロのページがとても気になってまして。本当の黒猫が黒マントを着てるんですけれども、このマントの裏地に色が入ると考えると、後の方のパーッと広がるイメージが、より一層深く伝わってくるような感じがして、このモノクロのページがとても好きです。
ネムリ堂 黒いマントだからこそ黒いページなんだけれども、そこに今後色が差されるっていう期待を持たせるような絵っていうことですよね。
香りと文学m.Aida そうですね、ここの、なんていうんですかね、イメージの広がりが、ここから本当にこのめくった裏地にどんな色が入るかによって本当に景色が広がるし、さらに匂いまでついてるんですよね。
非常に感心するようなものを私はこのページに感じました。他のも全部美しくて素敵なんですが、そんな感じです。
ネムリ堂 ありがとうございます。モノクロのページがモノクロならではの魅力を満喫させてくれる、そういうところも素晴らしいですね
香りと文学m.Aida はい、本当モノクロなんですけど、黒一色じゃないですよね。
ネムリ堂 そうですよね。黒なんだけど、黒もいろんな色があるっていう。そういう絵ですよね。
香りと文学m.Aida このページがパッと入ることによって、他のページは全部色が入っているのですけども、このモノクロページから広がるイメージ。
この絵に本当はもともと色がなかったのか、つけなかったのか、それとも印刷関係でモノクロになってるのか分かんないんですけども、ここのページだけモノクロっていうのはちょっとご本人に、もし、お話を伺えたら、伺ってみてほしいなと思いました。
ネムリ堂 松村さんの絵本『ひぐれのお客』は、「初雪のふる日」と一緒の2編が入っている絵本なんですけれども、「ひぐれのお客」、ここだけがモノクロで、他は全部カラーなんですよね。そこが他の絵ぶんこシリーズとちょっと違う点なので、このことについては今度松村真依子さんにインタビューをする機会がありますので、ぜひ伺ってみたいと思います。ありがとうございます。
香りと文学m.Aida 逆に、「初雪のふる日」は、表紙以外はモノクロなんですよね。「ひぐれのお客」の方はそのページだけがモノクロなので、ぜひ伺ってみてください。よろしくお願いします。
ネムリ堂 ありがとうございます。
Planethandさん、松村真依子さんの装画、MICAOさんの装画についてお話をお聞かせいただけますか。
Planethand はい、こんばんはPlanethandです。
そうですね。MICAOさんの方も本当にすごくなんていうんですかね、小人さんのような爽やかさというか、親しみやすさがあったりして。
私は「ひぐれのお客」は最初絵を見ずにずっと読んでいたもんですから、生地を舐めるっていうところがやっぱり素敵だなと思って。
松村さんも、本当に赤い色味がすごくあるんですけど、暖炉の線とかがすごく私は好きです。
ネムリ堂 そうですね。暖炉の火の温かさが素晴らしい色合いで表現されてますよね。ありがとうございました。
★手芸について、キンカ堂、ベンベルグ、裏地など
ネムリ堂 MICAOさんの刺繍は手刺繍であるということもあると思うんですけれども、安房さん手芸がお好きだったという。
ライラック通りの会で『こみち』という機関紙を出していたんですが、その3号に、生地や布にすごくご関心がおありだったということが記録として書いてあるんですね。
池袋のキンカ堂というところに、「ここによく来るのよ。」というふうにお話ししたというようなことを同人誌『海賊』の仲間の方にお話しされたという。そういうようなお話の記事が『こみち』の3号に載っています。
安房さんのお義母様は、洋裁専門学校のご出身でして、安房さんのお洋服は全て手作りされていたそうです。そのぐらい、手芸を身近に感じていた方だったんですね。
m.Àidaさん、キンカ堂についてお話ししていただくことがあるということで、お願いできますか。
香りと文学m.Aida キンカ堂なんですけれども私も大学時代にですね、よく行ってました。
毛糸がすごく種類が多くて安いということで、池袋駅の東口のすぐのところにありまして、日本女子大学は目白だったので、池袋まで一駅ですよね。
さらに安房さんは豊島区の千川にお住まいだったと書かれてたんですけれども、そこからも有楽町線で池袋は出やすいので、手芸好きの安房さんはとても利用されていたのではないかと思います。
さらに、池袋駅の東口のキンカ堂の近くに、ホワイトベアというレストランがありまして、このホワイトベアは洋食レストランなんですが、打ち合わせを編集の方とされてたらしいんですが、両方とも東口で、住所は、
キンカ堂は南池袋1の24の5
ホワイトベアは1の22の2
非常に近いんですね。
今は両方ともお店はないんですけれども、地図で比べてみますと、本当に近くて、駅のそばで、安房さんが通われていた場所があったんだな、というのが分かりました。
それから、安房さんが本当に手芸をお好きだったのだなと思ったのは、今回の「ひぐれのお客」の中の生地の説明でですね、カシミヤのマントに裏をつけるのには、どんな布にしようかな、という時にあすなろ書房版の13ページに「ベンべルグ」という言葉が出てくるんです。
この「ベンべルグ」というのは旭化成という繊維メーカーが開発した布地の商標名なんですね。
ネムリ堂 キュプラのブランド名ですよね。
香りと文学m.Aida そうですね。キュプラっていうのはですね、綿の種の周りについている産毛を糸にして作ったものなので、自然素材って言えば自然素材なんですけれども、カシミアや絹のような感じではない、絹には劣るということで、ここでわざわざそれを出してきて、安房さんこだわってるんですよね。
ネムリ堂 面白いですよね。
香りと文学m.Aida こういうふうに書くっていうのは、やっぱりこだわりがあったんだな、と。ご自分が手芸されてて、生地なんかも見ていらしたと思うんですよね。実際に手に取って見ることもあったと思うんです。
裏地とかもいろんなものがある、そういうのがこの童話の中に出てくるっていうのも、「ベンベルグ」っていう具体名でっていうんですかね、それがちょっと面白いなと思いました。
ネムリ堂 「ベンベルグ」っていうのはキュプラのブランド名であって、よくスーツの裏地に使用することが多いそうなんですね。ある意味「絹の偽物」みたいなもので、使い勝手はすごくいいみたいなんですけれども。シルクに似たような「シルクの偽物」みたいな立ち位置だったのかな。ベンベルグっていうのをちょっと調べてみたらそんなことが書いてありました。
あと、キンカ堂のお話なんですけど、キンカ堂っていうのは何階建てぐらいの建物だったんですか。
香りと文学m.Aida 確か2階か3階だったと思うんですけど。
ネムリ堂 2階か3階ぐらい。割と広いんですか。
香りと文学m.Aida 蒲田のユザワ屋みたいな感じだったかな。割と、ギュギュッと、店内が広いというよりはぎゅうぎゅうに詰まっているのが、2階、3階になっている…。
すいません。はっきり覚えていなくて調べれば出てくると思います。とにかく1階建てではなかったと思います。
ネムリ堂 そうなんですね。
香りと文学m.Aida 毛糸が、とにかく有名でした。私が行ってたってすごい、何十年も前ですが。
ネムリ堂 すごい。キンカ堂は今はないそうなので、すごく貴重な情報ありがとうございます。
(後注・Planethandさんから補足説明をいただきました。
→キンカ堂は本館と向かいに別館があって、売り場2階か3階まであって、生地や資材だけではなくて、洋服肌着もあり、手頃で種類が豊富だったから、少ないお小遣いでおしゃれがしたくていつも寄っていました(笑)
教室スペースもあって、閉店した際に「キンカ堂さんありがとう」という手紙が後から後から貼られ続けてニュースになっていたはずです)
ネムリ堂 ありがとうございました。あと、裏地の話が出たので裏地の話もちょっとお話ししようかと思うんですけれども。結構安房さんの作品、裏地とかマントへのこだわりが見えるような作品がいくつかあって、
「きいろいマント」
「マントをきたくまのこ」(未収録)
「空にうかんだエレベーター」
「ふしぎな青いボタン」
「山男のたてごと」(未収録)
「鏡の中」(未収録)
「三日月村の黒猫」
「星のこおる夜」
「きいろいマント」という作品があったり、「マントをきたくまのこ」や、「空にうかんだエレベーター」にもマントが出てくるし、「ふしぎな青いボタン」「三日月村の黒猫」「星のこおる夜」にもマントが出てくる。あと単行本未収録なんですが、「山男のたてごと」にもマントが重要なモチーフとして出てくるんですね。
それからもう一つ、単行本未収録の「鏡の中」という作品があるんですが、こちらも裏地のお話であって、「ひぐれのお客」と「鏡の中」両方ともすごくマントの裏地にこだわられていたということが面白いなと思いました。
江戸時代に、羽織の裏にこだわるのが流行って、幕府による贅沢禁止令が出されたことから生まれた、庶民の隠れたおしゃれとして、羽織の裏へのこだわりというのがあったんですけど、そのような粋な黒猫だなっていうのも面白かったです。
★安房さんのマント
ネムリ堂 安房さんのお姉さまから安房さんのマントのことについてこの間お伺いして、そのお返事をいただいたので、gentle.finger.windowさん、こちらのご紹介をお願いしてもよろしいでしょうか。
gentle.finger.window 安房直子さんのお姉さまからいただいた安房直子さんのマントについてのお話なんですが、ご紹介いたします。
【直子さんが着ていた久留米絣のマントの事ですが多分裏地も紺系の色だったと思います、亡くなった時に叔母から(直子さんの)お方見(お形見)として私が貰ったマントはモスグリーン色のウール地で裏地もモスグリーンのつるつるしたサテン地でこれは温かくて今も冬になると羽織っております。裏地は無地で模様はありません。】
ということです。
ネムリ堂 なんかね、すごい貴重なお話を伺っちゃって。
gentle.finger.window そうですよね。久留米絣のマントっていうのは今一つイメージが…。絣だから、ちょっとガサガサした感じなんですかね。
ネムリ堂 多分雪模様みたいな、ちょっと白いほとほと雪が飛び散っているような模様のマントが写真に残ってますよね。『こみち』の3号に掲載の写真に、安房さんの久留米絣のマントのお姿の写真があるんですが、それを見てみると、ちょっと雪模様みたいな感じのマントで。で、裏地については、先日、ライラック通りの会の読書会がありまして、その時に参加者の方が、安房さんのマントの裏地は何だったんでしょうねっていうご感想をくださったので…。それで裏地は何かっていうのを、安房さんのお姉さんにお聞きすることができてよかったです。
あと、その久留米絣のマントだけでなく、モスグリーンのマントも安房さんの形見として、安房さんのお義母様からお姉様がいただいたということで、モスグリーンのマントも安房さんはお持ちだったんだなっていうのも、すごい貴重な証言だと思いました。
gentle.finger.window 今、そんなにマントを活用してらっしゃるとか、着てる方って、そこまで見ないですけど、この時代は結構普通に着てたんですかね。
ネムリ堂 前に南塚直子さんのお話会で、安房さんのマントのお話が出たんですけれども、
「当時としてはマントっていうのはすごく目立つ装いだったのにもかかわらず、安房さんはあんなに引っ込み次第なのにマントを羽織っていらした」
っていうようなことをおっしゃってたから、決してすごくポピュラーなものでもなかったんじゃないかなっていう印象がありましたね。それでも安房さんはお気に入りでマントを羽織っていらしたようだったので…。
でも今よりはマントっていうのは身近だったかもしれないですよね。それでも、当時としても、ちょっと古風な姿だったかもしれない。
gentle.finger.window 着物を着ると、必ず外出かけるとき、羽織りを一枚羽織るので、絣の羽織りとかその感覚でマントなのかなと思って。
私の中でマントって言うと、温かいウール地の、それこそ安房さんのお姉さまがお持ちだったウール地のものをイメージしたんですけれど、久留米絣のマントっていうのが、要は本当に着物の上に着る羽織みたいな感じで…。安房さん、そんな風に着てらしたのかなって。それだったら着やすいっていうか。
ネムリ堂 そうですね。お着物にも合わせられるし、洋装の時もマントを羽織っていらしたみたいだったからそうなんですかね。ありがとうございます。
★糸や裏地を売ってるお店
ネムリ堂 あと、kurina1412さんからもご寄稿いただいてますので、そちらについてもご紹介お願いしますか。
gentle.finger.window お寄せいただいたご感想をご紹介しますね。kurina1412さんからのご感想です。
【物語の舞台が、裏通りにある小さな「ボタンや、糸や裏地を売っているお店」というところが好きです。布地屋さんではないんですよね。あくまで裏地。この物語、猫がマントをあつらえに来ただけなら、ありきたりだったと思います。マントの裏地だからこそ、秘密めいた魅力があり、粋なお洒落にこだわる猫や、堅実で手仕事の価値を知っている山中さんのキャラクターが生き生きと感じられます。夕食のお呼ばれしない終わり方も、面白いです。】
ネムリ堂 そうですね。kurina1412さん、どうもありがとうございました
gentle.finger.window 私、このご感想、拝見してて、裏地屋さんっていうのがそもそもあるのかなって思って。あったんですかね。糸と裏地を売っているお店。
ネムリ堂 手芸屋さんというよりも、もうちょっと規模が小さい感じのお店ってことなんじゃないですか。小間物屋さんみたいな。
gentle.finger.window 布と裏地って、やっぱりお店が違うものなんですかね。私はあまり手芸屋さんに詳しくないのでm.Àidaさんに聞きたいです。
ネムリ堂 ymstさんも手芸されるそうなので、ymstさんにもちょっとお伺いしたいですね。どうなんでしょう。ymstさん、糸や裏地を売ってるお店って、この作品ではあえて書かれてるんですけれども、どうなんでしょう。全然詳しくなくて、
ymst 今、布地屋さんにはボタンも何もかも売ってるとは思うんですよね。ですけど、なんかこのちょっと小じんまりした…、なんていうんだろうな。専門とか職人のようなお店のような気がしてて。
ネムリ堂 職人さんが片手間にやってるじゃないけど、なんかちょっと専門的な小さいお店ってことですよね。
ymst そうです。よく、例えば着物でも、その部品だけ作る専門の人っているじゃないですか。
ネムリ堂 そうですよね。
ymst そんな感じで、お洋服の本体を作るのは別のお店で、裏地とかボタンとか、パーツ専門の職人のような…。勝手にそんな風に思ってました。
それが現在もそういうお店があるかって言われたらちょっとわからないですけど、なんか、物語の中でそんなお店があるんじゃないかなって思ってました。
ネムリ堂 そうなんですね。そっか、そういうことですね。
m.Àidaさん、いかがですか。手芸屋さんというものの中のこの中で、あえて「裏通りにある小さなボタンや糸や裏地を売ってるお店」って書かれてることについて。
香りと文学m.Aida 私も、今伺ったようなことだと思います。ボタンや糸とか裏地っていうのは後から付け替えたりとかもします。なので、予備の品というかそういったものを売ってるお店なのかなとちょっと思いました。
ネムリ堂 ちょっと修理するにも、ちょっと行ってこようみたいな。そういうふうに便利に使えるようなお店なんでしょうかね。
香りと文学m.Aida 裏地とかの、ほつれて破けてしまった時に、そこに行って同じものを買ってきて付け替えたりとかするような。糸なんかもそうですよね。後から、ボタンが1個なくても、そこに行って買い足すみたいな感じで、そういうイメージのお店じゃないかと私は思いました。
ymst 裏地っていうところがあれなんですけど、ボタンとかリボンとかだけ売ってるお店っていうのはありますよね。渋谷の方とかにフランスのお店があって、わざわざ行ったりしたことあります。
香りと文学m.Aida 私も行ってました、多分(笑)。
★ミシン、仕立て屋の安房作品
ネムリ堂 安房さんの作品、そういったような手芸を扱ってるっていうよりも、ミシンとか仕立て屋のお話がたくさんあって、ミシンっていうのが題名にあるものだと、未収録作品になりますけど「小さな小さなミシン」っていう猫がミシンになっちゃうというお話があったりとか、あとは「歌を歌うミシン」(単行本未収録)という作品があったりとか。あとは仕立て屋さんやミシンを扱う作品としては、
「野の音」
「海の口笛」
「きいろいマント」
「だんまりうさぎと黄色いかさ」
であったり、いろいろとミシンや手芸、仕立て屋さんのお話がたくさんあるかと思います。
ymstさん、手芸をご自分でされるということで、先生に習ったことがあるっておっしゃってたんですけど、ちょっとそのお話もお聞かせいただいてもいいですか。
ymst そうですね。洋服作りではないんですけれど、昔パッチワークとかをよく習って作ってたんですよね。
そのパッチワークのお店っていうか、教室っていうのが当時すごいたくさんあって、一時期流行ったんですかね、カントリーみたいなところがすごいたくさんあったんですけど、この先生がいいって思ったのは「色」だったんですよね。色合いがどこにもない色合いだったんですよ。
ネムリ堂 まさに、「ひぐれのお客」のためのようなお話。
ymst なんていうのかな、その先生に教わったことが、その配色に迷った時に「自然の中から配色を見つける」っていう風に先生が言ってて、それはどういうことかというと、例えば花と葉っぱの色を合わせると間違いないとか、土と茎の色を合わせると間違いないとか、そういうことなんだけれど、それも、ただ赤と緑とかそういうことじゃなくて、この花にはこんな緑の葉っぱとか。全部色合いが違うんですよね。
ネムリ堂 すごいですね。これこそ本当、猫が言ってたような、いろんな赤があり、いろんな緑があり、っていう話と響き合ってきますね
ymst そうなんです。例えば赤いチューリップがあったら、この赤いチューリップにはこんな葉っぱとかっていう組み合わせの妙なわけで、だから本当に色って、微妙なところで大間違いになっちゃったりするんですよ。
特にパッチワークの中だったら、隣同士にいろんな色が来るので、すごくぐちゃぐちゃになっちゃうのをまとめるにはバランスなんですよね。
私もう一つバランスって思ったのが、表地と裏地のバランス。
ネムリ堂 裏地の話ですね。
ymst 表地が上等のカシミヤを使ってるわけですよね。多分上等のカシミヤっていうことにすごく誇りを持って使ってると思うんだけど、そうすると「裏」がさっき言ったシルクの偽物では絶対嫌だったと思うんですよね。
ネムリ堂 釣り合いが取れないんですね。カシミヤのための釣り合いとしては、使い勝手とか、洗えるとか、そんなことじゃなくて、「絹」じゃなきゃダメってことですね。
ymst シルク100%でお願いしますっていうのは、そういうこともあるんじゃないかと思ってて、まず質はね。
そこに裏地っていうのが、やっぱりすごい寒いからつけたいわけですよね。寒い予定だから。
「シベリア寒気団」って何ですか。寒そうですよね。
ネムリ堂 必ず冬になるとやってくる、「冬将軍」って言われるものが、「シベリア寒気団」にあたるものと同じものだそうです。
(後注・シベリア気団…秋から冬にかけてシベリアや中国東北部で発生する、冷たく乾燥した気団。冬、この気団が日本列島をおおうと北西の季節風が吹き、日本海側に大雪を降らす。)
ymst 私も北国に住んでるので寒いんですけど、ツルツルしたシルクって冷たくないのかなってちょっと思ったりね。
ネムリ堂 シルクはあれじゃないですか。しっとり温かくなりませんか。
ymst なるんだけど、一旦冷たくないですか。シルクって。
ネムリ堂 体温がすぐ移って、すぐしっとり温かくなるようなイメージがありますけど、違いますかね。
gentle.finger.window なんか、着物を着てて、着物の着付けの先生とかもそう言うんですけど、やっぱり正絹の着物…絹100%着物って、やっぱり肌触りが良くって、確かに体温が布に、自分の体の温度がこう、ぬくもりが移る、移ってくれる。今だったら洗える着物が流行ってるんですけど、要はポリエステルで、ポリエステルの着物なんですよね。それはまさにここの裏地の話で出てくるように、先生たちよくシャラシャラしてて肌触りが悪いから、「やっぱり正絹の着物じゃないと」、って必ず言うんですよ。
ネムリ堂 すごい。猫と同じこと言ってますね。
gentle.finger.window 猫と、ここに出てくるものも、いつも「着物」の話みたいだなって。
ネムリ堂 ですよね。なんかマントの裏地の話も、羽織の裏にこだわってるのと同じような感じがしますね
gentle.finger.window そうですね。着物もやっぱり裏にこだわりますよね。袷っていうと、必ず裏にもものすごくこだわるので。
ymst チラッと見えたりするから、余計おしゃれですよね。変な話だけど、学ランとかもそうじゃないですか。表にはなにもないけど、ちょっと広げたらすごい(笑)
Planethand 裏地についてなんですけど、私は、キンカ堂によく行ってたんですけど、素晴らしい昔のお洋服って裏地がないっていうのが、かえって珍しいと思うんですよ。今よりもお洋服をすごく大事にしていて、着物もそうだと思うんですけど、表地を傷めないっていう意味の…
ネムリ堂 表地を傷めないための裏地…。
Planethand そうですね、裏地がないっていう方がかえって珍しい。今の洋服の方が簡便化してるので、裏地がないお洋服の方が多いと思うんですけど、昔は裏地がないっていう方が多分珍しかったんだと思うんですよね。それはシルクであるとか、カシミヤであるとかを傷めないとかあとをつけないとか、そういうことがあるんだと思うんですよね。だからやっぱり裏だけ付け替えて、傷めたら裏だけ付け替えて、表の方を守る、長く使うっていう意味で、そういうのが生地を守る役目というか。
ネムリ堂 そうだったんですね。今とはちょっと違う価値観で、着物を大事にしていたというか、着るものをそんな風に大事に作っていたっていう。そういう時代だったわけですよね。
Planethand そうですね。肌なじみとかっていうのはもちろんあるんですけど、その生地を守るっていう意味で、擦れること、擦れたりするのを防ぐっていう意味じゃないかな、と。
gentle.finger.window そうです私、この間、単(ひとえ)の着物、夏用の単の着物を作ったんですけど、お尻の部分だけ、裏地っていうか、袷の裏を付けるんですよね。
ネムリ堂 そうなんですね。
gentle.finger.window 表が正絹で、座っちゃうと擦れたりして傷んじゃうので。
ネムリ堂 そういうこともあるんですね。お尻だけ破けちゃったら困るからちゃんと補強するわけですね。
Planethand パッチワークとかも、やっぱり専門の端切れのコーナーで色合わせをしたりとか、選ぶ楽しさみたいなものがやっぱりあると思うんですけど、最後、生地をはたきにするまで、裂けるまで使うっていう。
ネムリ堂 そうですよね。始末よくってことですよね。昔は布は最後まで使いましたもんね。最後は本当オシメなり、雑巾にするなり、っていうところまで寿命を全うさせるようなそういう使い方をしましたね。
はい、ありがとうございます。
gentle.finger.window 裏地にこだわるって、そういう意味では、日本ならではの伝統なんですかね。
Planethand 「裏優り」っていう言葉はすごい素敵ですよ。
ネムリ堂 羽裏の話ですか。羽織の裏の。
Planethand そうです。
ネムリ堂 「裏優り」って言いますよね。ありがとうございます。
★500円の価値
ネムリ堂 ちょっと脱線するんですが、500円で猫が絹の生地を買っていくじゃないですか。それで1980年代の価値はどんなのかっていうのを、ちょっと調べてみたんですよ。
現在だと1.1m×33cmの正絹を買うとしたら、700円から3600円ぐらいまで幅があるみたいなんですね。多分、絹のグレードによるんだと思うんですけど。
シルクサテンの場合は500円から1800円ぐらい。
1980年頃の正絹の価値っていうのが、だいたい、
1.1m×33cmだと、推定約300円から5000円ぐらいみたいなんです。
これはAIに調べてもらいました。
1980年代の500円というのは、今でいうとだいたい1000円から1250円ぐらいの価値があるそうです。
ちなみに具体的には、1980年代の
コーヒー1杯が150円から250円、
ラーメン1杯が300円、
ビッグマックが300円だった。
だから、ラーメンやビッグマックよりも高い裏地を、猫は買ってたっていう。そういうことが分かりました。
どうでしょうか。
gentle.finger.window 1m×33cm、33cmを買ってるんですよね。そんなに大きくないような気がするんですけど、猫どれくらい大きさだったのか…
ネムリ堂 もしかして33cmとしか書いてないから33cm×33cmの正方形買ったかもしれないですよね。
でも、それはちっちゃいなと思って。だから裏地だから、ちょっと多めに買ってたかわかんないけど。
gentle.finger.window 絵で見てるだけなので、なんとなく大きい猫想像しちゃってたんですけど、普通の猫のサイズだったんですね。
ymst 私もそれすごい思ったんですよね。33cmっていうのを見て、あ、猫だな、と思って。
gentle.finger.window 勝手に大きい猫を想像してたんですけど。
ymst なんかね人と対等に話してたからなんか大きい感じがしてたのが、そのフレーズで急にシューっと…、あ、猫だな、と思って。
ちょっと扇形に切ったりするんじゃないかなと思って、33cmでも多分満杯に使わないっていうか、ちょっと無駄が出るようなぐらい使う…
Planethand 布地は、幅が90cmとか120cmとかが結構多くて70cmとかもあるんですけど。
ネムリ堂 幅×33cm。
Planethand そうですね。半円に使ってるはずだから、やっぱりちょっとこう余りは出るんだろうなっていう感じです。
ネムリ堂 なるほど。じゃあ、それはパッチワークに使ってるかもしれませんね。
ymst シルクなんで、使ってるかどうかは…(笑)
ネムリ堂 そうか。(笑)
Planethand フードが付いてるかもしれないから、フードなんかで使ってるかもしれない。
ネムリ堂 フードもあるかもしれませんよね。さすが、洋服の現場におられた方のお話は違う。ありがとうございます。
★色の共感覚
ネムリ堂 この作品なんですけど、布の色だけでなく共感覚というか、目で見える色であったり、音であったり、匂い、手触り、味、感情や温度などが、全部一つの色から感じるという、そういうお話でもあると思うんですね。
そういう「発見」の物語だと思うんですよ。
「どの色も、どの色も、今は静かに眠っていますけれども、取り出して広げてみればみんなそれぞれの歌と香りを持っているように思われました」っていうようなことが書いてある。そういうお話ですよね。
薪ストーブの赤の裏地は、まず焚き木の燃える音として、音と一緒に赤が感じられると。また乾いた木の匂い、嗅覚ですね。あと、ほんのりといい感じに温かいということで、触覚や温度。とろとろと静かに揺らめくものが見えるということで、視覚や温度。落ち着いて優しい色ですね、ということで、感情をも感じさせる。そういうようなものを感じさせる色だということが安房さんの作品からは発見があると思います。
他にも、オレンジがかった赤の裏地ですとか、ピンクがかった赤の裏地ですとか、紫がかった赤の裏地ですとか、あと青や黄色や緑ですね。それもそれぞれの色々な温度、視覚、触覚、嗅覚、味覚、感情、温度、いろいろなものを感じさせる、そういうお話だと思うんですね。
そのことについて、kurina1412さんからご寄稿いただいていますので、gentle.finger.windowさん、ご紹介をお願いしてもよろしいですか、
gentle.finger.window はい。kurina1412さんからのいただいたご感想です。
【安房さんの作品の魅力の一つである豊かな色彩が堪能できる作品です。ただ裏地を見比べるだけでなく、猫がなめるという小さな魔法の手順を踏む部分が安房さんの作品ならでは。色の違いを視覚からだけでなく、手ざわりや、音を聞くことでとらえる感性が、素敵です】
ということです。
ネムリ堂 ありがとうございます。
★小さな日常の魔法の物語
ネムリ堂 yamamomoさんからもご寄稿いただいておりまして、こちら私の方から紹介させていただきます。
【「色って言うのは、ふしぎなものだな」
薪ストーブ色の裏地の買い物に満足した猫が帰ったあと、山中さんは店の中にあふれるたくさんの裏地の色を眺める。平凡な裏通りの小さな店の中に繰り広げられた豊かな世界、今まで知らなかった、それぞれの色彩のもつ無限の物語の世界に心を開かれた思い。店の風景が突然いきいきと新しい世界の豊饒として目の前に開かれているのに気づくのだ。
とても楽しい気持ちになって、山中さんは、猫と一緒にその色彩の世界をひとつひとつためしてみたいなあ、と、そのとき猫にご馳走するブイヤベースのことをもう考えているのである。
*** ***
これは、例えば「白いおうむの森」とは対極にある作品群であるといえる。
自然や異界の持つ底知れぬ怖さから離れたところにふわりと浮かんでいるいつもの優しい日常の中に、人間の暮らしの中にひっそりと紛れて暮らしている猫やねずみや植物たちの、豊かな世界が存在している。世界を彩ってくれる小さな優しい物語の魔法。】
ということです。
このように優しい日常の魔法の物語として、この「ひぐれのお客」を解説してくださっています。
それの対極にある作品として、「白いおうむの森」を例として挙げておられるんですけれども、こちらについてはyamamomoさん、さらにこんなように書かれています。
【「魔」としてひきこんでしまう自然や人の思いの切なさの織りなす世界のその胸を打つ切なさ美しさ恐ろしさ。】
yamamomoさん、優しい日常の魔法の物語として、「ひぐれのお客」については、このように書かれています。
【対立、恐怖ではなく、ただ共に生きる、そのこころの助けとなってくれる。豊かな楽しい魔法を持ちながら互いに助け合い、トモダチになれる関係性の中で、世界の楽しさ不思議の豊かさを繰り広げてくる方向に特化している】
こうした日常の魔法の物語の例として
グラタンおばあさんとまほうのアヒル
ふしぎなシャベル、
小さな金の針、
海からの電話、
夢見るトランク、
黄色いスカーフ、
ゆきひらの話、
などを例としてあげてくださっています。
yamamomoさん、ありがとうございました。
yamamomoさんの論考はこの後もまだまだ続くんですけれども、そちらは冊子になった時に全文ぜひお読みいただければと思います。
このように「ひぐれのお客」、日暮れという、昼と夜の狭間に、異界に誘われる時間に、小さなお客が訪ねてくる、そういうお話ですね。
「ひぐれのお客」の他にも、安房さんの作品には、ひぐれという単語を使ったタイトルの作品がいくつかありまして、
ひぐれのラッパ
ひぐれのひまわり
日暮れの海の物語。
この4つの作品が、あえて、ひぐれとタイトルに冠している、そういう作品たちです。
どれも、昼と夜の狭間に小さなお客が訪ねてきたり、不思議な出来事が起こったり、そういうお話になっています。
★「空色のゆりいす」、色へのこだわり
ネムリ堂 あとちょっとまたお話が元に戻るんですけれども、色がテーマの作品として、「空色のゆりいす」という作品もあると思うんですね。
「空色のゆりいす」は、目の見えない女の子が風の子に色を教えてもらう。まず、空の色、あと、花の色の赤、そして海の色の水色を教えてもらうという、そういうお話なんですけれども。
こちらゆりいすに座ると、そこに塗った空の色を「体験」できるという、単純な視覚だけではない、空そのものの存在を体験できる、そういうお話なんですね。
また、花の色については、こちらも「ひぐれのお客」と同じようにただ色だけではなくて、赤い赤いばらの中の、ばらの匂いであったり、赤という色を「あたたかい厚いひざかけのような色」としてそのように表現して、手触りですとか、温度ですとかを、そういうものと色を一緒に表現してますね。
あと、「シレソの和音のような色「心にしんしんしみる色」というように赤を表現してます。
この「空色のゆりいす」の中では、赤自体は、一晩経って荒れ果てたばら園が色のない絵のように浮かんでくるようなところだけが女の子には見えて、実際のゆりいすは一晩で赤い絵の具が色あせていたという、そういうお話になっています。
最後の海の色の水色なんですけれども、こちらは、風の子はその色をもらってくることには成功せず、その代わりに歌を海から習ってきます。この歌を聞くことによって暖かい真っ青な青の海の広がりで温度や視覚、波の輝きや遠い水平線、かすかな潮の匂いまでわかるということで、目で見えるものだけでなく、匂いまで、音楽によってその海の歌によって、海そのものの存在を体験することができる。そういうお話かと思います。
gentle.finger.window 安房さんの物語、色にこだわりを持ったものが結構ありますよね。
ネムリ堂 そうですね。
gentle.finger.window 私、そこも思うんですけど、色にこだわりがあるというか、同じ赤でもたくさんの種類の赤が見えてる。同じ青でもたくさんの種類の青が見えてて、それぞれに、この青はこういうイメージ、とか、こういう意味があるとか、目に浮かぶ色んな青、色んな赤が…、音楽で絶対音感ってあるじゃないですか、それと同じような感じで、絶対色彩感じゃないけど絶対色感―そういうのあるのかなって。同じ赤でもたくさんの赤が見えて、それぞれの赤がこの赤はこれ。この赤はこれ、ってパッとイメージができて、それを言葉にできる。
安房さんってそういう絶対の感覚じゃないけど、他の物語いろいろ見ていても、色に対してこだわりがあるし、その色が意味を持ってたりするし、それをうまく言葉にできてて、私たちがイメージできる。絵を描く人も、それをイメージして描きたくなる。そういうのあるのかなって。
ネムリ堂 ちょっと違うかもしれませんけど、アルチュール・ランボーなんかは、アルファベットに「色」がついてるっていう詩を書いてますね。実際本人も言葉を発するときに、色が見えていたそうで、その色を一緒に思い浮かべながら詩を書いてた。
(後注・『イリュミナシオン』(Les Illuminations)という散文詩集のなかの「母音」という詩です。Aは黒、Eは白、Iは赤、Uは緑、Oはブルー。)
gentle.finger.window わかります。それに近い感覚を私、安房さんの物語をいろいろ読んでて思いました。安房さん、そういうのが見える人っていうか、感じられる人。
Planethand 具体的に赤だったらこういう赤、っていうのもあるんですけど、4月の森の色とか8月の森の色ってちょっとふんわりした表現。4月の森の色ってなんだろうって思うと、やっぱりそれでもちゃんと浮かんでくるっていうか、それぞれの人の中に委ねられるっていうか。
すごく明快に、この赤は暖炉の色で、この青は空の色でっていう部分もあったかと思えば、そういうふうにふんわりとその人それぞれに委ねられる色のところがすごいあるんですよね。
ネムリ堂 お話の最後でそういう風に、4月の森の色だったり、8月でしたっけ、お話の最後の部分ですよね。だから、お話が、結局読者に最後、委ねられておしまいになって、開かれた終わり方をしてるっていう。そういうことでもあるかなって思います。
Planethand なるほど。感情まで届くような色の表現をするっていうのは、本当にびっくりですよね。
ネムリ堂 すごいですよね。そこは本当に素晴らしい。
安房さんが「空色のゆりいす」を書いていた頃のエッセイなんですけれども、ご自分の文章だけで、色も匂いもその風景そのものをね、「全部ありありと感じさせたい」っていうようなことを書いてるんですよ。「だから私の作品には挿し絵はいらない」って、最初はそんなようなこともエッセイでおっしゃってたんですね。
だからそれだけ文章力に頼むところがあったというか、文章だけの力で想像力を喚起させる、読者に風景を呼び起こすような、そういうことをすごくこだわって描かれてた方だったようです。
gentle.finger.window 絵を描く人でも、普通に私たちが、絵の才能がない人と違って、写真みたいに絵描ける人っているじゃないですか。筆一本で本物みたいに描ける人、同じように文、言葉でそれができる人が安房さんだったのかもしれないし、色とか、目に見えるものの捉え方が才能なんでしょうけど…
Planethand 漫画家さんで、ラフストーリーを作るときに、まずコマ割りをしたあとで、絵を描く前に全部字で書くそうなんですよ。ずーっと全部書いていって、最終的に絵で描ける部分だけ残して。絵で伝えられる部分は全部絵で伝えて、もうその文字をどんどんどんどん削っていって、絵で伝えきれない、最後に残された文字だけを、中にセリフとして残していったりするんですって。
ネムリ堂 すごいですね。
Planethand 絵を描かれる方は逆に、そうやって、自分の表現したいものを文字から起こしていって、文字を削っていくみたいな。そういうのもあるみたいですね。
ネムリ堂 なるほどね。ちなみにその漫画家さんはどなたなんですか?
Planethand ヤマザキマリさん。
ネムリ堂 ヤマザキマリさん、『テルマエ・ロマエ』の。
Planethand ヤマザキマリさんと萩尾望都さんの特集で。
ネムリ堂 面白いですね。
gentle.finger.window だから安房さんの物語で絵を描きたいとか、作品作りたいっていうアーティストの方、たくさんいらっしゃるのかもしれないですね。
ネムリ堂 そうですね。
Planethand それは皆さんちょっと違うところがまた面白いですよね。
香りと文学m.Aida ちょっとよろしいでしょうか。
ネムリ堂 はい、どうぞ。
香りと文学m.Aida 安房さんの物語の作り方ですとか文章力についてなんですが、安房さんは大学の卒業論文で源氏物語の研究をされたんですね。
その卒業論文は非常に優秀だということで日本女子大の図書館に行くと読むことができるんですけれども。
ネムリ堂 賞を取られましたよね。
(後注・この卒論が認められ、日本女子大学創立者の名を冠した「成瀬記念奨学金」を、授与された。」
香りと文学m.Aida 源氏物語の何をテーマにして研究されたかといいますと、宇治十帖で描かれる自然描写ですよね。
それを非常に細かく拾い上げて分析をされていまして、源氏物語もほぼ当時は文章だけで表現して相手に伝えるという形だったので、そうやってこと細かに研究することによって、後のご自分の創作にも非常に活かすことができたというふうに、冊子『安房直子さんと海賊』(花豆の会 2003年刊行)の中でも書かれてまして、そういった研究によって、もちろん先生の指導もあったと思うんですが、自分でもそういった努力もされていて、研究をされていたものをうまくこなして作品に昇華させていたのではないかなと思いました。
特に、自然描写に着目していたってところが、安房さんの作品には自然がいっぱい出てくるので、非常につながりがあるのかなと思いました。
ネムリ堂 卒論の中だと、どんなふうに作者が作品の中で自然を見せるかということに結構着目して書かれていて、非常に分析的ですよね。
香りと文学m.Aida 本当にそうなので、論になっててちょっとびっくりしました。機会がありましたら、皆さんに読んでいただきたいです。
ネムリ堂 そうですね。ありがとうございます。他に、「色」についてのお話、いかがでしょうか。
Planethand なんか色から受ける感情っていうのは、やっぱり昔と今とは少しずつ変わってくるものなんですかね。それともずっと普遍的にっていうか、感じるところは一緒なものなんですかね。
ネムリ堂 やっぱり、文化によって、外国での色の感じ方と日本の色の感じ方は、文化によって違うように、その時の背景とかが違ってくるのでは。例えば黄色っていうものが外国ではユダヤ人を表してたりして、あまり良くない色として扱われてたりするじゃないですか。また、赤毛の赤がキリスト教でのユダの髪の毛の色だから赤毛は嫌うとか、そういうようなキリスト教的な背景と日本の「赤」とはまた違う意味があるかもしれないですよね。
そういうことはあるんじゃないかなと思いますけど、今と昔とどう違うかってなっちゃうと、やっぱり価値観とか昔感じられてたことが今となってはあまり価値を持たなくなってくるとか、そういうことはあるかもしれないなってちょっと思いました。どうでしょうかね。
Planethand そうですね。そういうふうに押さえていると、自分の感覚と時代とかっていうものをちょっと意識して感じたくなりますね。
ネムリ堂 ただそうですね。やっぱり安房さんが青という色に感じていたものは、そのままどんなふうに感じていたかということが読んでいて伝わってくるから、そのことによって私たちの価値観を、そして、また新たに子どもたちの価値観を、作っていくっていうようなこともあるんじゃないかなと思ったりもします。
Planethand 安房さんの持つ感覚っていうのは、やっぱりどこか現代にすごく近い部分があって、だからこそ共感を呼ぶようなところがあるので、ちょっと時代的に違うっていうものはあるのかもしれないけど、すごく身近に感じたり、発見させてくれたりすることが多いですね。やっぱりね。
ネムリ堂 今読んでも、そのビビッドな感覚が伝わってきますよね。ありがとうございます。
★「赤」の物語
ネムリ堂 「赤」の物語」として、この「ひぐれのお客」を捉えたアロマスタイルさんからのご寄稿を、gentle.finger.windowさんご紹介いただいてもよろしいでしょうか。
gentle.finger.window アロマスタイルさんからのご寄稿をご紹介します。
【作品のテーマカラーは「赤」かなと思い
安房直子さんのエッセイ
・1978年 未明童話の中の赤(単行本未収録作品集⑥)
・1983年 惹かれる色(安房直子コレクション①)も読み返してみました
エッセイによると 好きな色は青系だけれど 今一番 興味をもち 心ひかれているのは「赤」という色 赤は不思議な色
明るく あたたかい色でもあり たとえようもなく暗く悲しい色 不吉な感じ
小川未明の作品を読んでからは
「はなやかな色 明るい色」から
「深い悲しみ 不気味な暗さ 呪詛のようにこめられている」
「あたたかさ はげしさ 悲しみ よろこび 吉と不吉 妖気 暗い不吉 目にしみるように美しい 正反対のいくつものイメージ」を感じるようになったという安房直子さん そこから安房直子さんの「赤」が印象的な物語を書き出して 悩みながら 私なりに分類してみました
★ストーブの赤
(ひぐれのお客)(わるくちのすきな女の子)
(火影の夢)(ひめねずみとガラスのストーブ)
★はげしさ 怒りの赤
(わるくちのすきな女の子)
★灯り 目印としての赤 予感
(雪窓)(熊の火)(水あかり)(ある雪の夜のはなし)
(鶴の家)(エプロンをかけためんどり)
★かわいらしい あたたかい赤 元気 勇気
(しいちゃんと赤い毛糸)(きつね山の赤い花)
(赤いばらのかさ)(初雪のふる日)
(だんまりうさぎ)(赤いスカーフ)
★悲しみ さみしさの赤 予感
(ねがい)(水あかり)(鳥にさらわれた娘)
★美しさ あたたかさ 別れ 悲しい結末 さみしさ(正反対のいくつものイメージ)
(熊の火)(水あかり)(赤い魚)
(エプロンをかけためんどり)
(赤いばらの橋)(鳥にさらわれた娘)
(ひめねずみとガラスのストーブ)(空色のゆりいす)
★妖しく美しい赤
(緑の蝶)
★吉と不吉
(赤い魚)
まだ不十分な分類ですが 安房直子さんの物語に登場する色彩の分類は 全色いつか挑戦してみたいなあと思っています】
ネムリ堂 はいありがとうございました。ぜひ、全色分類していただいて結果をお知らせください。
gentle.finger.window 面白い研究ですね。ぜひ伺いたいです。
ネムリ堂 私はプラスして、「さびしい色としての赤」もあるんじゃないかなと思って拝見しました。
例えば「夕日の国」の赤ですとか、「もぐらのほった深い井戸」、「エプロンかけためんどり」の血のように赤い夕日ですとか、ひなげしの悲しくおそろしい赤い色とか、あと「大きな朴の木」のさびしい夕日みたいに、さびしい色としての赤もあってもいいかな、なんて思いました
はい。ありがとうございます。どうでしょう。タイトルに赤ってつけてる作品もいくつかありますもんね。面白いですね。
私も「赤」をちょっと分類してみたことがあって、その時はこういうふうにはげしさとかあかりとか、そういうふうに分類しないで、「植物の赤」とか「目の色」とか、「火」「太陽」「月」「魔法」「服飾」「ガラス玉・宝石」「血」みたいに、なんかもっと即物的に分類しちゃったんですけど…。そんな風に分類してみたことはあります。
★はちみつ色
Planethand あとなんか安房さんの色の表現の仕方ってすごい最近面白いなと思ったのが「はちみつ色」っていう。あまり親しみがなかったので…。親しみがないっていうか「はちみつ色」っていう言葉自体がちょっと面白いなと思って。
ネムリ堂 結構、外国の翻訳された文章なんかに「蜂蜜色の髪の毛」とかでてくるような気がします。
Planethand 「蜂蜜色の髪の毛」って、すごく珍しく感じました。
ネムリ堂 うーん…私も、安房さんの文章で育ってるから、それで安房さんを吸収してあんまり不思議に思わなかっただけかもしれないですし…。でも翻訳文学には、蜂蜜色のなんたら、みたいなのが結構あったような気がしますけどね。金色と同義で。だから、日本の昔からの作品にはあるかわからないけれども。そうですね。
そういう「はちみつ色」っていうのだけで、ちょっと「青空文庫」などの全検索とかしてみたら面白いかもしれないですね。
Planethand いいですね。
(後注・「青空文庫」全文検索の結果は、
・はちみつ色→1件
「あのときの王子くん」サンテグジュペリ
・蜂蜜色→2件
「プロテウス島」ワインバームスタンリー・G 蜂蜜色の眼
「最愛の君」パイパーヘンリー・ビーム 蜂蜜色の髪
ヒットしたのは全て翻訳文学。日本の古典には無い表現かもしれません。)
Planethand 「山吹色」っていうのは、なんかしょっちゅう感じていたような気がするんですけど、黄色なんかで。
ネムリ堂 山吹はね。日本の花の色ですもんね。
Planethand 日本の方ですよね。
(後注・花のヤマブキは日本原産。『万葉集』にもたびたび登場するほど栽培の歴史は古く、古歌にも好んで詠まれ親しまれてきたそうです)
Planethand 色鉛筆の中で山吹色っていうのがなんか色の分類で一番親しみやすかったので…。本当に普通の子供だったので。
ネムリ堂 色鉛筆で「はちみつ色」はないですよね。でもあったら素敵ですね。「はちみつ色」っていうと猫の目の色ですよね。安房さんの話でよく出てくるの。
Planethand そうですね。
ネムリ堂 「おしゃべりなカーテン」だと猫が白と茶のまだらのおばあさん猫で目ははちみつ色、って出てきますし、あとは他には「春の窓」もまだらのはちみつ色の目の猫っていうのが出てきますね。はちみつ色はそのぐらいかな、
私の、安房さんの作品を色で分類した資料で、「はちみつ色」調べてみますね。ちょっと待ってくださいね。
Planethand なんか、猫の目の色の表現で、よく見かけてた気がします。安房さんのやつで。
ネムリ堂 そうですよね。はちみつ色…、はちみつ色はやっぱり3つしかないですね。
「春の窓」のまだらのはちみつ色の目の猫っていうのと、あと「おしゃべりなカーテン」の目ははちみつ色で白と茶のまだらのおばあさん猫っていうのがいて、あと、「三日月村の黒猫」に、はちみつ色に光る朝つゆのボタン、っていうのが出てきます。一応はちみつ色で、私が把握しているのはその3つの表現ですかね。3つしか無い…。
でも、それがすごくインパクトがあるってことですよね。それだけ覚えてるってことは。
Planethand そうですね
ネムリ堂 ですよね。
★安房作品の中の猫
ネムリ堂 猫の話にちょっとそのままなだれ込んじゃうんですけど、安房作品の中の猫ちゃんっていろんな目の色でいろんな色の猫ちゃんがいて…
「ひぐれのお客」この中の猫ちゃんは真っ黒で、目はエメラルドの緑なんですね。
「まほうのあめだま」っていうのは、猫が主人公なんですけど、チローという猫の色は白。でもいもとようこさんの挿し絵はシャム猫模様なんですけど、文章では白って書かれてます。
「猫の結婚式」のギンは何色かちょっとわからなくて、チイ子の色は白で目はエメラルド色。
だから結構エメラルド色の目の猫が多いような気がしますね。
あと、「三日月村の黒猫」は片目の黒猫で、目は金色。
「春の窓」がまだらのはちみつ色の目の猫、
「ねこじゃらしの野原」っていう豆腐屋さんの方のお話は猫の名前がタロウで、茶色の猫で目は金茶。
もう一つの、単行本未収録の方の「ねこじゃらしの野原」の方は太った茶色の猫で、目はすばらしい金色の猫が出てきます。
「だれにも見えないベランダ」の猫は白猫で、目はオリーブのような緑、
「ふしぎなシャベル」は麦わら帽子の猫で、目の色には何も書かれていません。
「ゆめみるトランク」はまだらのメス猫です。
「おしゃべりなカーテン」では白と茶のまだらのおばあさん猫で、目ははちみつ色、真っ黒な若い猫の2匹の猫が出てきます。
「丘の上の小さな家」では、まだらの猫で黄色い目の猫が出てきます。
「ふしぎな文房具屋」ではミミちゃんという猫ちゃんが黒くて尻尾が長く、目はエメラルド。
「やさしいたんぽぽ」では白い子猫が出てきます。
安房さんのお姉さまに、猫についてもちょっとお伺いしたので、そちら、gentle.finger.windowさんご紹介お願いできますか
gentle.finger.window はい安房さんのお姉さまから伺った安房さんの家での猫の話ですね。
【私の家で飼っていた猫はどういう訳か何時も白と黒のぶちで鼻に黒いあざがありました。名前も何時も「コロ」でした。猫の目の色は覚えていませんが普通の猫の目でした。実は(直子さんの)養母の久子さんは犬や猫が嫌いでした。それを知っている直子さんは猫を飼ってくれと言えなかったようです。】
gentle.finger.window なんか、お姉さまのお宅にはよく行ってらしたんですかね。
ネムリ堂 お小さい頃は猫ちゃん撫でたり抱っこしたりしたんですかっていうのも聞いてみたんですけど、安房さんは、お姉さんの家に遊びに来た時は、猫ちゃんでよく遊んでました、みたいにおっしゃってました。
gentle.finger.window じゃあ、安房さんご自身は多分お好きだったんでしょうね。
ネムリ堂 多分、猫ちゃんお好きだったんでしょうね。
ただ、松谷みよ子さんが安房さんの文庫のあとがきに書かれてる文章にあったんですけれども、安房さんご自身は「ペットを飼うのはなんだか怖いようで、私は飼えません」っておっしゃってたようで、実際にご自身で飼ったりはしなかったようですね。
それは、小さい頃、ここにお姉さまがおっしゃってたように、お義母さまが犬や猫が嫌いだったということがあったからかもしれないんですけれども。
猫、いろんな猫がいますけど、どうでしょう、洋裁と黒猫の関係とかもちょっと面白いなと思ったんですけど。「三日月村の黒猫」と「ひぐれのお客」はどっちも真っ黒で、どっちも手芸の話であったりして。
gentle.finger.window そうですね。色によって猫の性格とか実際違うって言うじゃないですか。白い猫と黒い猫と色々。
ネムリ堂 違うらしいです。茶色い猫は人懐こくて、白い猫はちょっとツンケンしてて、みたいなこと言いますね。
gentle.finger.window 聞きますよね。安房さんのお話の中で何かあるんですかね。猫の種類や色。
ネムリ堂 白い猫とまだらの猫と黒い猫とがよく出てきますよね。
Planethand 黒い猫、ちょっと器用な感じがするんですかね。
ネムリ堂 黒猫はね魔女の使いだったりね。
gentle.finger.window あのう…、なんかこう三毛猫みたいなのってちょっと気さくなんですかね。気さくっていうか、親しみやすいんですかね。
ネムリ堂 ああ、まだらの猫ちゃんね。まだらっていうと、サビ猫なのかなと思ったんだけど…
gentle.finger.window あっ、サビ猫か。
ネムリ堂 でもわかんない。安房さんのお姉さんは、「自分ところの猫は白と黒のブチで」って書いてあるから、「まだら」ってもしかして「白と黒のブチ」のことを指してるのかもと思ったりして…。
安房さんがどんなような意味で「まだら」って使ったのかが今となっては分かんなくて残念だなって思うんですけど。
gentle.finger.window そうですね。まだら…。でもなんかサビ猫っぽい気もしないでもないけど…。
ネムリ堂 私の感覚で普通に考えると「まだら」って言うとサビ猫思い浮かべるけど、安房さんがまだらをどう使ってたのかが分からないな。
Planethand 茶色っていう表現もありますもんね。
ネムリ堂 茶色い猫も出てきますね。「ねこじゃらしの野原」って未収録の方では太った茶色い猫が出てきたりとか、あとは豆腐屋さんの「ねこじゃらしの野原」もこっちもタロウも茶色でしたね。
猫の一人称も、この「ひぐれのお客」だと、最初は「ぼく」って言って、そのうち「私」とか言ってて、もったいぶった感じで面白いんですけど、そこら辺についてアロマスタイルさんからご寄稿いただいてますので、gentle.finger.windowさん、ご紹介をお願いしてもよろしいでしょうか。
gentle.finger.window ご紹介します。
【「しぶいから中年向きだ」という山中さんの発言に対して さもけいべつしたよう「いけませんねえ そういう決め方は」と
たしなめる場面も好きです
はっきりきっぱりクールだけれど
(家内は洋裁学院の猫であることを話してくれたり カレーを食べずに帰るのは 味の好みの問題だけではなく 早く家に帰りたいからという気がしたりしています)
実は愛妻家なのではないかと感じさせる発言もお気に入りです】
ネムリ堂 ありがとうございます。面白いですね。
gentle.finger.window このお話聞くとなんか可愛いですね。
ネムリ堂 愛妻家っていうのは、私はこのアロマスタイルさんのお聞きして、そうだったのか、と思いました。
ありがとうございます。
では他にお話し足りないことがある方、いらっしゃいますか、今スピーカーになっている方でいかがでしょうか。
じゃあ時間ですので、そろそろ今日は終わりにしたいと思います。ありがとうございました。
次回は「火影の夢」を取り上げたいと思います。
こちらは大体12月の初めぐらいにできたらいいかなと思ってるんですが、ちょっとまたズレ込むかもしれません。よろしくお願いします。
こちら「火影の夢」の次は「白いおうむの森」、その次が「銀のくじゃく」となっています。
「火影の夢」は何に収録されているかといいますと、
偕成社文庫やちくま文庫、筑摩書房の『銀のくじゃく』に収録があります。また、安房直子コレクション6巻にも「火影の夢」収録されていますので、ぜひ次回もご参加いただけたら、と思います。
では、今日はどうもありがとうございました。
(2025・9・12)